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10/06
お灸と長靴
来月ヴェネツィアに行くことに決まり、例によってせっせと旅の準備を始める。今回は寒い時期に行くので、いつもより念入りに足腰を調整しておかねばならない。毎日ビタミン補給に足裏マッサージと軽い運動、それからウォーキングを兼ねて、わざと遠くの銀行やマーケットまで足を伸ばすことにしている。できるなら体重も落として身軽になりたい、というのが切なる願い。11月の末に行くことを知らせると、ヴェネツィア人たちは皆口を揃えて「ABBASTANZA FREDDO---かなり寒いよ〜」という。もちろんコートの要る気温だし、雨や霧の日も多い。つまり神経痛には辛い季節なのである。ヴェネツィアでは、マンマを筆頭に神経痛持ちだらけなので、お土産に湿布は欠かせない。冬場はホカロンも喜ばれる。今回はそれに加えて「せんねん灸」も持っていくことにした。一度試しに持っていったら、煙が立ちのぼるミステリアスなムードがおおいにウケたのである。皆興味津々でお灸をすえてもらいたがり(!)、まるでにわか鍼灸所のようになってしまった。お灸は「MOXA」(モグサのこと)という名称で呼ばれるが、指圧などに比べてまだまだ知る人は少ない。それにしても神経痛持ちだなんて、私もいっぱしのヴェネシアンかも。(喜んでる場合じゃないか)というわけで、旅にまず必要なのは歩きやすい靴。ふだん履き慣れたスニーカーでもよいのだけど、底冷えのする石畳を歩くには、もう少し底厚の靴が望ましい。昔、凍りついたフォンダメンタで足を滑らせ、腰を打った文字通り痛い経験もあるので、靴選びは慎重になる。靴の本場に行くのだから、こっちで買っていかなくてもと思うが、足にぴったりの靴を探すのはひと苦労、現地ですぐに調達するのは難しい。それに、早めに買ってしばらくこっちで履き慣らしておかなくちゃならないしね。基本の靴を確保しておけば、2足目3足目の買い物は余裕をもって楽しめる。もしかすると長靴「STIVALI」が必要になるかもしれないが、これはヴェネツィアの家にあるのを借りることにするから大丈夫だ。さもなければ、雑貨屋(さすがに長靴の品揃えは充実している)で、マイ長靴を買ってみるのも一興かも。お次はあたたかい下着や靴下の類い。これは、ユニクロや無印良品にとどめをさす。もちろんイタリアにだってあるけれど、リーズナブルなジャージー素材やフリースなどの質は日本のものに限る。(実際には中国製だったりもするが)アントネッラなど、東京に来るたびに無印のTシャツや靴下を買い込んでいる。(100円ショップの軍足もお気に入りだ)お土産用にちょっと余分に買っておこうかな。さて、肝心のコートなどの防寒アウターだが、今回はヴェネツィアで買おうと思っている。ここ数年冬のコートを買いそびれているが、流行のキルティングコートなどちょっといいなと思うと、イタリア製であることが多いのだ。今、エウロが最高に高いので悩むところなのだけど、ここはひとつ向こうで調達することにした。実はイタリアのなかでも、ヴェネツィアはファッションセンス的には、お世辞にもトレンディとはいえない。どちらかというと伝統的で質実剛健な感じ。目抜き通りにはお約束のブランドショップが軒を連ねているが、グッチやプラダなど住人の生活とは無縁の存在だ。もちろん私にも関係がない。セレクトショップもなくはないが、まだ数は少ない。ただし、冬あまり寒くならない東京とは違い、防寒ウェアは必需品なので、町の洋品店レベルでもそれなりのクオリティのものが充実している。それになんといっても、サイズの設定が広いのである。この頃、東京で服が買いにくい理由のひとつが異様なまでのサイズの小ささだ。中高年用のブランドは別として、一応トレンドものが欲しいとなると、Mサイズなんてとんでもなく細いし、Lサイズだってかなり無理しなければならない。インポートものも、わざわざXSや36とかの小さいサイズしか扱ってなかったりする。もちろん、こっちの体型に問題があるのは分かっているが、それにしても、なのである。試しに袖を通してみたキルティングやダウンコートはことごとくピッチピチで、無念にも惨敗であった。この傾向はメンズもしかりで、今どきのイケてる男は相当に細身サイズのようだ。

旅じたくの最後は例の「飛行機本」である。今回はミステリーではなく、文化史、建築学系のお勉強本にしようと思っている。以前はよくヴェネツィア史等を真面目に紐解いていたのだが、この頃はさっぱりなので、久しぶりに復習することにしたのだ。ヴェネツィアで建築史の本を読んだら、そのまま町に出てフィールドワークができる。これって、なかなかの贅沢だよね。久々のヴェネツィア暮らし、今から楽しみだ。
お灸と長靴