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02/04
鳥の歌
1月末、父が急死した。立春を待たず、あっという間に逝ってしまった。脳内出血で倒れ、緊急入院してからわずか5日後のことだった。それからというもの、葬儀の忙しさやさまざまな手続き関係の雑事に追われ、悲しみに浸ることはおろか、ゆっくりモノを考えることすらできないでいる。通夜の日は涙雨のような冷たい空模様だったが、その後はずっと晴天続き。初七日、ふた七日と一週ごとに暖かさが増し、今はまだ2月の末だというのに、まるで春まっさかりのような陽気だ。ふんわりと春風に包まれ陽光を浴びると、薄皮を剥ぐように、心がなだめられていくような気がする。とはいえ、私をはじめとして家族の誰もが皆、父の死に対して実感を持つことができないでいる。ふと、いまだにどこかの病院に入院しているだけなのではと思えることもある。父が好きだった家の庭にも、梅がいっせいに花開き始め、ほのかに甘酸っぱい香りを漂わせている。朝早くからウグイスがやって来て、さえずっている。今年は花も早いけれど、鳥の来訪も早いようだ。庭先にはウグイスやムクドリ、シジュウカラ、セキレイ、ヒヨドリ、メジロなどを見かける。実家の周辺は新興住宅地ながら、都会に比べ野鳥の数もずいぶんと多い。そう思って気にかけていると、目の前のつくばいにシジュウカラが下りてきて水浴びをしたり、ふと見上げた梢にムクドリが飛び移ってきたり、まるで挨拶をしにきたようなタイミングで、道の真ん中にセキレイが下りてきたりする。鳥たちの姿を見るにつけ、飛び立っていった父の魂のことを思わずにはいられない。空を自由に飛び回る鳥は、人間の魂を運んだりできるのではないだろうか。その歌はどんなメッセージを届けてくれるだろうか。まだこれからもしばらくは、実家での用事に追われる生活が続きそうだ。鳥の歌に耳を傾けて、本当の春がやって来るのを待ちたいと思う。