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3/00
初出版
2000年は私にとって記念すべき印象的な年。初めて本というものを出したのだ。前年の11月終わり頃からY2K問題に脅えつつ準備を始めた。その時には2000年3月23日発売というのが、すでに決定しており、まさに強行軍。怖いものしらずの所業。初めてだからできたんだろうと思う。一応、通常の仕事と並行して本を書くなんて芸当は出来ないと思って、仕事をストップして集中して出来る限界が3ヶ月かなと、素人なりに計算もしてみた。実際は、2ヶ月で中身を書き、1ヶ月でデザイン、レイアウト、校正、それから印刷の作業となった。

それからというもの起きている間は原稿を書き、イラストを描き、写真を選び、とにかく本のことだけを考える生活。おかげでそれ以外のことはまるで無能。この食い意地のはった私が料理はおろか、ものの味さえ感じない状態となり、そのうち眠れなくなって、文字通り寝食を忘れた。ところが、ふだん仕事でコンピューターに向かうとあっという間に肩がこるのに、全然肩こりしない。風邪もひかない。アドレナリンが出てたのか、妙に元気で不気味なくらい絶好調。

原稿が一段落した時点で、たしか1月の終わり頃、ゾクッと背中に悪寒が走った。ここで風邪なんかで倒れたらいかんと、気合いを入れたら事無きを得た。ほんとは、体はボロボロなのに脳のほうで関知しないようにしてるのだな、よくいう精神力で持ってるというやつにちがいないと、我ながらちょっと感心。と同時に、書き終わったら一体どんなことになるのかと怖い感じも。しかし、ここはかまわず突き進むしかない。

さて、原稿を書き終えたらまだ大丈夫だった。デザインの段階になって、久しぶりに徹夜して、お肌に悪いな〜と思ったけれどまだ元気。ケンケンガクガクの校正に次ぐ校正にちょっと参ったな〜となりながらも平気。そして結局下版しても、刷り上がっても、なんにも起きなかった!ほっとするやら、拍子抜けするやら。 でも、こんなにストレスフルな日々だったのだ。目にはみえぬが、きっと体のなかはどうにかなってるはずだと、ちょうど誕生月だったので区民健康診断へ。なかば期待にも似た気分で結果を聞きにいったら、ここでも健康そのもの。おまけに、「とくに血液がいい!すぐに献血しなさい。」といわれる始末。もちろん、喜ぶべきことなのだ。でも、なにかすごくデリカシーのない人間みたい。ちぇっ。

それから本など書いたら、自分もまわりもなにか変わるのではないかとひそかに期待していたが、これもなんにも起きなかった。少なくとも今のところはなにもない。あっという間に、いつもの仕事が堰を切ったように始まり、元通りあれこれ雑事に追われる生活に戻ってしまった。本を書いていた間の、あのナチュラル・ハイな2ヶ月あまり。今となっては、もう夢のなかのことみたいだ。