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やっとやっとヴェネツィアへ行くことにしました。去年は結局行けなかったので、実に1年半ぶりです。エアチケットを買う前の、いつものお約束の儀式、まずはヴェネツィアのマンマに電話をしなければなりません。いかにも遠くから(タイムラグのある)声が響いて来るような感じだった昔と違って、イタリアへの電話も渋谷区内へかけるのと音声的には何ら変わりないのが凄い。マンマは電話に出るなり、「チャーーーオ、いつ来るの?早くビリエット(チケット)を買いなさい」と、これもまたあいかわらずの元気な声。で、すみやかに予め下調べしておいたエア・チケットをネットで購入するわけです。旅に行こうと思った時から旅が始まる、というのがわたしの持論なのですが、その意味では、ネット上でのディスカウントチケット探しをはじめた時点がスタートです。その昔は旅行代理店と電話でかけひき、トーマスクックの時刻表やガイドブック首っ引きだったけれど、なんでもネット検索&予約できる昨今、旅の手配も様変わりしたものです。そして今までとのさらなる違いはイタリアの友人たちへの連絡がFacebookで済んでしまうこと。リアルタイムでさくさく連絡できるので、楽なことこの上なしですが、逆に相手から「〜を買って来て」というようなリクエストもぽんぽん返ってくることにもなるけれど。昨年の震災のことがあるので、また再び会えることに、イタリアの皆もわたしもお互いに格別な思いがあります。昨年3月のあの不安と混乱で心が暗く押しつぶされそうだった日々に、ヴェネツィアは遥か遠くに浮かぶ夢のような存在でした。心のどこかで「もしかしたら、もう二度とヴェネツィアには行けないのかもしれない」と思ったことも一度ならずありました。
4月下旬から5月にかけては、日本ではゴールデンウィークにあたる時期なので、わたしたちが最も訪れる機会の多い季節です。一時ヴェネツィアの皆の間では、4月の終わりになるとやってくる渡り鳥みたいな連中と思われていたようです。この頃はヴェネツィアが最も美しい季節。復活祭の頃に一気に春がやって来て、空は覆いを取り払ったように晴れわたります。Serenissima---晴朗なるというヴェネツィアに冠される形容詞そのもの。クレマチスや藤の花が咲き、メルロ(クロウタドリ)が啼き、すみれ色に輝くティエポロの空、そして、大好きなアスパラガスの季節でもあります。アスパラガスの産地で有名なバッサーノのアレッサンドロは早くもこちらの気持ちを見抜いていて「アスパラガスを食べにおいで」とのメッセージ。もちろん、行きますとも。プロシュットのサン・ダニエレ村にもね。
その上、なんという神の采配か、サンマルコのコッレール美術館ではKLIMTの大展覧会の会期中ではありませんか!!実は今一番観たいのはクリムトの絵だったのですから。ヴェネツィアでクリムトーーこの展覧会を見るためだけでも訪れる価値があるというものです。今までもヴェネツィア、パラッツォ・グラッシィでダリ、バルテュス、ピカソ、そして前回はサン・ジョルジョ・マッジョーレでのピラネージというそれぞれに重要な展覧会に遭遇してきたけれど、今度もそれらに匹敵する体験になりそう。ヴェネツィアでクリムトに出会う。夢が叶う、という気分を久しぶりに噛みしめています。 |
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